研究代表者ご挨拶

 がん患者では治療や病状の進行に伴い生活機能に障害を来し生活の質が低下することから、リハビリテーション診療の重要性が指摘されています。がんのリハビリテーション診療の均てん化のためにはリハビリテーション診療を提供する側の資質の向上が必要であることから、H30 年~ R3 年度に「厚労科研補助金(がん対策推進総合研究事業)がんリハビリテーションの均てん化に資する効果的な研修プログラムの策定のための研究(研究代表者 辻 哲也)」が実施され、医療従事者が研修を受講できる体制の構築や研修プログラムの策定や効果の検証が行われ、研修の体制整備を進めてきました。

 現在、(厚生労働省後援)がんのリハビリテーション研修(CAREER)は、のべ5万名以上の医療従事者(医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が受講し、現在も継続的に研修が実施されています。一方、がんサバイバーが治療を受けている時期だけではなく、後遺症対策やスムーズな社会復帰、生涯にわたる身体活動や運動習慣の維持するためには、がん診療連携拠点病院等の医療機関での入院中だけではなく、外来や在宅医療等においてもリハビリテーション診療が実施できる体制の構築が求められています。

 また、がん治療後に生じるリンパ浮腫については、がんのリハビリテーション診療の一環として、上述の研究班において医療従事者の資質の向上のための研修体制やプログラムの整備がなされ、研修の体制整備を進めてきました。現在、(厚生労働省後援) リンパ浮腫研修(LEARN)は、のべ4500名以上の医療従事者(医師、看護師、理学療法士、作業療法士、あん摩マッサージ指圧師)が受講し、研修協力施設での実技研修と連携して、現在も継続的に研修が実施されています。一方では、実際に診療を行っている全国の医療機関に関する情報へのアクセスに課題があることが指摘されています。

 本研究では、様々な診療の場面においてがんのリハビリテーション診療を適切に提供するための判断支援ツール(Cancer Rehabilitation in Decision Support Algorithm :CARDS)を開発し、普及させる体制を提案することを目的とします。また、全国の各地域におけるリンパ浮腫の診療ネットワークを構築し、その情報をわかりやすい形で公開することを目的とします。

 がんのリハビリテーション診療やリンパ浮腫に関する医療者向けの標準化された研修が全国展開され、がん診療連携拠点病院等で実践されている国は他にはなく、我が国の研修システムは世界最先端です。本研究では次のステップとして、その体制を在宅医療や外来へ展開して参ります。欧米のみならず、今後がんが重要な社会問題となっていくアジア諸国を先導する立場にありその役割は重要と考えています。

 研究の進捗や開催イベントの案内はホームページ上で、適宜、ご報告いたします。今後とも、ご支援、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

研究代表者 辻 哲也

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