令和3年度(2021年度)~令和4年度(2022年度) 厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業) がんリハビリテーションの均てん化に資する効果的な研修プログラム策定のための研究
研究概要
研究目的
がん患者では治療の影響や病状の進行に伴い、日常生活動作に障害を来し、著しく生活の質が低下することから、がん領域でのリハビリテーション(以下、リハビリ)診療の重要性が指摘されている。しかし、がん診療連携拠点病院等における対策はいまだ十分ではなく、社会復帰の観点も踏まえ、外来や地域の医療機関等と連携し、がんリハビリを実施する必要がある。
そこで、H30年度~R2年度に「厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)がんリハビリテーションの均てん化に資する効果的な研修プログラムの策定のための研究」が実施され、がんのリハビリ研修プログラムの立案、学習目標設定、e-learningシステムによる研修プログラムの教材を作成し、一定の成果が得られた。
本研究課題では、がん診療やがんリハビリ関連学協会、がん有識者と協力体制をとり、がん患者の社会復帰や社会協働の観点を踏まえて、がんリハビリを効果的に実施するために開発した標準的な研修プログラムを普及させる体制を構築し、その研修プログラムによる(厚労省後援)がんのリハビリ研修を全国で実施し、その評価と更新および臨床現場における有用性を踏まえた検証を行うこと、がん専門医療機関での入院リハビリとともに外来や地域における適切ながんリハビリ診療やリンパ浮腫診療の実施に向けた提案を行うことを目的とした。
研究方法
2年間の計画で、開発された研修プログラムを実施し、がんのリハビリ研修プログラムの評価と更新、臨床現場における有用性を踏まえた検証を実施、適切な、がんリハビリ診療の実施に向けた提案を行うことにより、がん患者がリハビリを受けられる体制を拠点病院等に普及させる。研究の全体計画は、以下のとおりである。
・令和3年:開発した研修プログラムでの研修の実施・評価と更新・検証
・令和4年:適切ながんのリハビリ診療実施に向けた提案
結果と考察
①開発した研修プログラム(がんリハビリ研修:E-CAREER)による研修の実施・評価と更新
E-CAREERが、各地方で円滑に導入できるように、地方研修の企画者用の研修マニュアルを作成し、E-CAREER説明会や研修会を実施し、双方向の情報共有が可能な連携体制を構築した。また、普及啓発の一貫として、ホームページ作成・更新、がんリハビリ講演会を実施、地域や外来でのがんリハビリ診療に関する動画コンテンツを作成し、ホームページ上で公開した。視聴者対象アンケートでは理解度・満足ととも良好であった。
②開発した研修プログラム(リンパ浮腫研修:E-LEARN)による研修の実施・評価と更新
E-LEARNの進捗や学術面での情報共有を行い、プログラムの見直し・更新を行った。また、普及啓発の一貫として、地域でのリンパ浮腫診療に関する講演会を実施、地域や外来でのリンパ浮腫診療に関する動画コンテンツを作成し、ホームページ上で公開した。また、リンパ浮腫研修協力団体との意見交換会、交流研修会を実施した。
③開発した研修プログラムの臨床現場における有用性を踏まえた検証
研修終了後に、開発された研修プログラムの効果の検証を行うため研修直後のアンケートを実施、研修終了6か月後のアンケートを実施し分析を行った。
④適切ながんリハビリ診療の実施に向けた提案
がんのリハビリ・リンパ浮腫診療に携わる有識者やがん患者団体の委員を対象としたグループワークを実施し、今後のがん診療連携拠点病院等のがん専門医療機関におけるリハビリのあり方や研修のあり方を検討、適切ながんリハビリ・リンパ浮腫診療の実施に向けた提案書を作成した。
以上、研究は交付申請時の計画どおり、遅滞なく実施され終了した。第3期がん対策基本計画では、がんのリハビリ診療は重点課題とされ、がん医療におけるリハビリ診療の重要性は益々増している。本研究の成果により、各地域の拠点病院等でのがんのリハビリ診療が普及し均てん化が促進した。
結論
本研究課題では、がん診療やがんリハ関連の学協会、がん有識者(患者会代表等)と協力体制をとりつつ、1)開発した研修プログラムでの研修の実施し、その効果を検証し、全国のがんのリハビリ研修で導入すること、2)がん専門医療機関での入院リハビリとともに、外来や地域における適切ながんのリハビリ診療やリンパ浮腫診療の実施に向けた提案を行うことを目的とした。研究期間中、研究は一貫して交付申請時の計画どおりに遅滞なく研究は実施され、一定の成果が得られた。CAREER 研修のように全国的に標準化された研修が展開されている国はほかにはなく、我が国の研修システムは世界最先端である。欧米のみならず、今後がんが重要な社会問題となっていくアジア諸国を先導する立場にあり、その役割は重要である。